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文芸意見交換会5_開催レポート

2023/8/18(金)の夜に招文堂Twitterスペースにて「文芸意見交換会5」が開催されました。

主催は招文堂に棚を持つ、店主・花村渺さん。

いつもは3〜4人で開催されるこの会ですが、今回は花村渺さんと招文堂・主催のやまおり亭、二人が作品を提出し、会の後には雑談タイムを設ける形での開催となりました。

当日のようす

意見交換会は、主催である花村さんの作品をトリにするという通例にのっとり、まずはやまおり亭の作品から。

ベニーの目配せ - ベニーの目配せ(やまおり亭) - カクヨム
「この部分を、私の国では〈歯〉と呼ぶのです」

二人きりでお喋りをするのは初めてのこと。最初は少しぎこちない部分もありましたが、いざ作品のことなれば、どちらも舌はなめらかです。

▼花村さん⇒『ベニーの目配せ』への感想メモ

続いて立場を交換し、次はやまおりが花村さんの作品について感想を伝えます。

花村さんの作品はこちら。

櫛 - 夢が墜つ(花村渺) - カクヨム
不穏系幻想短編集3

『櫛』 感想メモ:やまおり亭

〇櫛:【くし】初回ルビ入れる?
〇乱杭歯:【らんぐいば】初回ルビ入れる?

〇裕福でない:「裕福で【は】ない」のほうがしっくりくる? ぼくの地の文がかなり文語的なので、いきなり口語感の強い言い回しが出てきて少し驚いたのかも。

地の文やキャラの口調バランスとして、たまに口語調が混じるって設定ならこのままでも。

〇お姉さまはぼくの雇い主で、首のたるみを見るとぼくよりずっと年上なのだろうと思う。:「雇い主【で】」が、それ以下を導くことに違和感あるかも。

・調整案1)「ぼくの雇い主であるお姉さまは、首のたるみを見ると~」

・調整案2)「お姉さまは僕の雇い主で、年齢は知らされていないのだけれど、首のたるみを見ると~」

★補遺:助詞の【で】には、平たく言うと「【で】の直後で描写されている事象の範囲を限定する」効果があるらしいです。今回の場合、《首のたるみから見るとお姉さまはぼくより年上⇒その事象が発生しているのは「お姉さまは僕の雇い主」だから≒【で】あるから》という意味構成であるようにも読み取れ、そこに違和感を感じたのかも、と思いました。

〇うしろの窓がちらりと映る。:うしろの窓が映ったのは鏡である旨をより明示的に表現してもよいかも?

〇すきまなく閉ざされた花柄のカーテンは織目に夜がにじんでいる。:すき!

〇そのときもすでに三十分を越えていた。:直前までの流れが、今まさに、ぼくがお姉さまの背後に立ってしごとをしているように読めるので、「そのとき」は少し時間的距離を感じすぎるかも。

しかし同時に、この描写はぼくが仕事をやめる前のものなのだ(つまり「そのとき」で間違いない)と後から判明する。時系列については途中まで、小さな困惑を抱えつつ読んだ。この困惑が花村さんの意図通りなら、このままで。そうでなければ、ぼくが殺されるまでの時系列をもう少し明示的に表現してもいいかも?

〇毛さきまで:ひらがな多めの文体であると承知していてもなお、ちょっと読みづらいかも。似たような形の漢字(毛)とひらがな(さき)が混在しているのが原因?

〇可憐な顔のとなりに乱れた歯列が映る。:可憐な顔の持ち主は「お姉さま」? 直前にぼくの外見描写があり、ちょっとミスリードされる気も。顔の持ち主について補足があってもよいかも。

〇フリルのギャザーみたいでかわいらしいじゃない」:お姉さまの言い回しかわいいなと初読時は思ったが、ラストを加味するとグロテスク。よき…。

〇ぼくは髪にそうするようにゆびから唾液を遠ざけた。:お姉さまの指がぼくの口につっこまれた後に対話パートがあり、その部分でぼくが特に喋りにくそうではないため、ぼくの咥内に会話の最中もずっと指がつっこまれていたような描写はやや違和感? 会話とこの描写の順番を入れ替えてもいいかも。

〇しごとをやめると告げたのも夜だった。:「【お姉さまに】しごとをやめると告げたのも」など補足してもよいかも? このあとに出てくる「玄関」がお姉さま宅のものだと明示するためにも。

〇気がつくと手斧を持ったお姉さまがぼくのからだをぶつ切りにしていて、ぼくはじぶんが頭部だけになったことを知った。:あえて視点が変わらないの面白くてすき。歯を櫛にするっていうファンタジックな設定ともマッチしている感。

〇そしてぼくはぼくの意思とは無関係に櫛をつづけることとなった。:「ぼくは【、】」くぎってもよいかも。短いスパンで「ぼく」が続くのでやや難読か…? 縦書になったら気にならないかも、とも。

〇全体:
・オチがすき!
・自分が書いているものの特性と売り(不穏幻想純文学系)を言語化できているのは、表現者として大変にすてきなことだと思いました。
・嫌な話であり、その嫌さが主人公亡き後も繰り返されてゆくのだ……としっかり明言されているところがとても好ましい。嫌なことが終わらないのって本当に嫌だ…。

お互いの感想メモをもとに意見交換。

意見がするりと飲み込まれることもあれば、「いや実は、ここってこういう意図で」「ああ! それなら直さないほうがむしろよいですね」という会話がなされることも。

お互いの「この作品でやりたかったこと」を持ち寄って、更によい描写/表現の方法はないかと頭を捻ります。

意見を交換するだけではなく、すり合わせまでできるのが、この会の楽しみの一つかもしれません。

雑談タイム

会の後は募集していたおたよりから「ワークショップで意見を言うときに気をつけていること」「最近見た映画の話」などについてお喋り。

「ワークショップで意見を言うときに気をつけていること」

両人共通の見解としてあがったのは
「その作品のよいところを見つけること」
「自分が持った意見の過多や種類を気にしないこと」

違和感の正体があいまいであっても、「引っかかった」という事実を会で伝えられたならそれで十分。どうして引っかかったのかは、ワークショップの中で、みんなで考えてゆけばよいのです。

ワークショップ参加のハードルは高くないよ、と改めて念押しする二人でした。

最近見た映画

その後は30分ほど、最近みた映画について語り合いました。

話題に上った映画たち。

・サイレンツ
・パール
オオカミの家
・ヴァチカンのエクソシスト
・スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
・ワイルド・スピード/ファイヤーブースト

どの映画がどちらの作者の推しか、なんとなくわかるラインナップが面白い。

録音なしのワークショップなので、どんな話をしたのかは内緒です。

今後の招文堂ワークショップ

花村さん主催のワークショップは、今後も定期的に開催予定。

また現在、同じく招文堂店主・山本Q太郎さん主催のクローズドなワークショップも参加者募集中です。お楽しみに!


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